本紹介 新田浩之著『いろんな民族と言語に出会う 鉄道の旅』

新田浩之著『いろんな民族と言語に出会う 鉄道の旅』の紹介

この本は、筆者である新田浩之(にったひろし)氏による、中東欧地域の鉄道旅行エッセイである。ただ、単なる旅行エッセイではない。中東欧地域への入門書、という役割も個人的にはあるのではなかろうか。

本書は、ロシア・中東欧の鉄道地図からなる章と、新田氏による旅行記による章の2章構成で成り立っている。

従来の中東欧を紹介する書籍は、主に文学や政治、経済などの側面から紹介されることが多い。しかし、この書籍は、主に「鉄道」と「旅行」という側面から中東欧地域が描かれている。「鉄道」と「旅行」という観点を得ることで、読者は中東欧地域の新たな一面や、新たな発見ができると私は考えている。

また、本書には中東欧諸地域が抱える歴史問題や政治問題、未承認国家に言及している部分がある。本書を読んだだけでそれらの問題の全体が理解できることはないが、20世紀初頭・中期に起こった問題が現代にも禍根を残しているということは、理解できる。そして大学生が本書を読めば、論文のテーマになりそうなことが見つかるかもしれない。

そして、これは旅行記である。ロシアやウクライナベラルーシに現在渡航することは困難だが、その他、チェコポーランドに関する記述は、当該地域を旅行する方にとっては非常に有益なものであるだろう。私も中東欧諸国を訪問する機会があれば、新田氏の書籍を大いに参考にしたいと考えている。